映画の日だというので、『スパイダーマン:スパイダーバース』を見ようと思ったのは1,100円で見れるからだ。
「スパイダーマン」は、すっかりアメリカの売り物となった感のあるスーパーヒーローものの中でも、"変な顔の人ばかり出る”『X MEN』と並んで僕が好きな作品。
主人公がティーンエイジャーという点において、他よりも共感しやすいスーパーヒーローだ。
なにせ17、8歳といえば悩み多い年頃な訳で、ただでさえ学校だ、友達だ、恋人だ、家庭だと無数の悩みを抱える年頃の少年に、放射性のクモに噛まれたというだけで、N.Yを守る役目が課せられるのだから大変だ。
結果的にいうと、「1,100円だから」という当初の僕の目論見は見事に外れた。
第一に、本作が本公開前の3日間だけの先行上映であり、しかもIMAX上映のみだったため1,100円ではなく1,900円も取られてしまったからである。(しかもIMAX専用の3Dメガネ代100円をケチって、前から持っていた3Dメガネで代用しようとしたため、設定が異なり3Dどころか赤と青の二重写し状態で、目がおかしくなってしまった)
第二に、本作の内容があまりに素晴らしかったことだ。
本作は先日の米アカデミー賞®で長編アニメーション賞を受賞した作品である。
(日本の作品が受賞を逃したことばかりニュースになっていた)
スパイダーマンことピーター・パーカーが死んだことは予告編で伝えられていたが、そのため本作の主人公は黒人のマイルズである。
N.Yのハイスクールに通う彼は、警察官である父親とうまくいっておらず(そういう年頃)、遊び人の叔父さんのアパートに入り浸って、二人してあちらこちらの壁にスプレーアートを書きまくっている。(N.Yではアートだが、日本では迷惑な犯罪と見られることが多い)
ある日、マイルズは落書き中にクモに噛まれた。
その日以来、彼の体は異常をきたし始める。
(例のごとく)指が粘着質になり、転校生の女の子の髪の毛に触れた途端に指が取れなくなったりする。
次第に、自分がスパイダーマンとなったことを知るマイルズの元に、異次元からやってきたピーター・B・パーカーが現れ、マイルズにスパイダーマンのスイングの仕方を伝授する。
しかし、マイルズの世界ではスパイダーマンは死んでおり、事情がつかめないマイルズ。
彼ともう一人のパーカーが訪ねた叔母の家で、なんと複数のスパイダーマンを紹介される。
彼らは全て異次元からやってきたスパイディーたちで、異次元の歪みを正して、彼らを元の世界へと戻さなければならない。
しかしマイルズは、いわゆるヘタレだ。
他のスパイディーのようにスイングもうまくできないし、特殊能力である透明化も自分の意識で行うことができない。
そんな時、なんと敬愛する叔父さんが悪の手先と知ってしまい、しかも、おじさんは戦いの中で殺されてしまう。
どうすればいいのか。
マイルズは決心をして、自分から「飛ぶ」ことを決意する。
こうして新しくスパイダーマンとなったマイルズと他のスパイディーたちが力を合わせた戦いが始まる・・・
くどいようだが、本作はアニメーションである。
マイルズを始めとした登場人物は3DCGだが、背景や効果などを伝統的なアメコミ風に作り込んである。
実写映画でもなく、「アリータ」のようなモーションキャプチャーでもないアニメーションなのだ。
先般もバットマンのアニメのことを激賞したが、本作にも言えるのは「アニメならではの自由な表現性」である。
本作が実写映画でなく、アニメーション映画という選択をしたことで、これまでにない表現が実現したのである。
(その意味で"実写をわざわざアニメにする"日本のアニメとは、表現の次元が違うと言わざるを得ない)
これはすごいことだ!
ディズニースタジオが、かつての名作アニメを必死で実写化しているのと正反対の試みでもあり、僕はこの試みに諸手をあげて賛成をする。