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    猿に見せたい「猿の惑星:新世紀(ライジング)」


    "ヒトの世紀が終わろうとしている"。「猿の惑星 新世紀(ライジング)」を見ながら、これは誰に見せたい映画なのだろうかと考えてしまった。

    本作は前作の続きである。

    研究所で作られたウィルスによって「猿インフル」が世界に万延し、人類の半分が死滅してから10年が経った。理性を持った猿シーザーは今や群れのリーダーとなり、サンフランシスコの山で妻や息子たちと平和に暮らしていた。ある日、シーザーの手下が人間と遭遇し、射殺された。絶滅したと思っていた人間がまだ生存していたことに驚くシーザーだったが、人間は近くの山中に眠っている水力発電所を修理して稼働させたいと訴える。人間に電力を与えれば、再び勢力を盛り返すのではないかと危惧する猿たちだったが、シーザーは「今や人間たちは必死だ。それを押さえつければ必死で歯向かってくるだろう」と、発電所の修理を許可する。深慮のシーザーに対して、群れのナンバー2は反対する。秘かに人間の跡をつけると、廃墟と化した街の一画に生き残った人間たちがコロニーを作って暮らしているのを発見。なんとそこには大量の武器庫があった。それを知ったナンバー2は、仲間を募って武器庫を襲撃。銃を手に入れたナンバー2は、リーダーであるシーザーに対して武力クーデターを起こす。リーダーを失った猿たちはナンバー2の言いなりとなって人間を襲い‥‥。

    この新しい「猿の惑星」シリーズは回数を重ねるたびに、前シリーズの売りだった猿の特殊メイクから、超リアルなCGへとビジュアルを変えた。モーションキャプチャーによってリアルに作られた猿たちは、もはや作り物の域を超えて猿そのものだ。

    そのせいもあるのだろう。前作では人間社会で唯一育てられた猿の話だったものが、本作ではその猿、シーザーが主役となり、冒頭から最後までまるっきり猿の映画となった。途中、確かに人間は登場するものの、映画の視点は完全にシーザーのものとなっている。

    シリーズものにつきもものアクション大盛りという感じではなく、濃厚なドラマが語られ、映画の出来は悪くない。が、しかし、いかんせん主役は猿なのだ。人間に育てられ、理性を持った猿とはいえ、ビジュアルは猿そのものである。猿好きな人はともかく、その猿、シーザーが人間との戦いに巻き込まれて苦悩、葛藤するとはいえ、そこに観客が完全に乗れるかといえば厳しい。僕は映画を見ながら、どうにも他人(他種族)の話を見ているようにしか思えなかった。猿同士のいがみ合いはともかく、猿同士の恋愛感情は見ていてどうにもついていけない。

    だって、猿は猿である。傷をうけたり、毛の色を変えたりして、猿一匹一匹の個体差はつけているが、なかなかどの猿が誰なのか見分けがつきにくい。後半になって、次第に猿の顔が区別できるようになってくるのだが、ここまで猿が主役の映画になってしまうと、果たしてこれって、誰に見せたい映画なのだろうと首を傾げたくなってくる。

    主人公のシーザーに感情を載せきれないまま、映画はエンドを迎えた。スクリーン一杯に写し出されたシーザーの顔は、新たな決意の表情で、次回作の方向性を暗示しているように思える。次はシーザーが猿の帝国を作る物語?それとも、シーザー亡き後の息子たちの物語?もしそうなら、それはこの映画がますます人間の観客のものでなくなることを暗示する。猿と人間が入れ替わるというこのフィクションが勝手に増殖する「暴走」を始めたように思えるのだが、どうだろう。



     
    | 座付き作家 | 映画の感想 | 05:48 | comments(0) | trackbacks(1) | - |
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      『猿の惑星:新世紀(ライジング)』お薦め映画
      文明に毒された私たち人間が哀れに思えてきた。人間には最初から猿を殺す発想しかなく、リーダーのレベルからして、既に人類は猿に負けている。最先端技術を駆使した映像と、練りに練られたストーリーのお蔭で、猿がしゃべっても、馬に乗っても、銃を構えても、現実味を
      | 名機ALPS(アルプス)MDプリンタ | 2014/10/09 1:18 PM |
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