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    64

     

    宣伝文句通りかどうかは、さておいて。

     

    映画『64ロクヨン 後編』を見た。

     

    前編が引っ張りに引っ張って、結局何も起こらないで終わったので、さぞかし後編では一気呵成に事件が進むかと思われた。

     

    7日間しかなかった昭和64年。

     

    天皇崩御とそれに伴う平成の始まり一色に染まる中で起こった少女誘拐事件、通称「64」。

     

    少女の死体発見で幕を閉じた事件は、犯人が捕まらないまま時効まで1年となっていた。

     

     

     

    本映画を誘拐事件ものと見るか、警察ものと見るかで見方は変わってくる。

     

    原作者お得意の警察ものとしてみるならば、県警と本庁、上司と部下、この巨大組織の中でもがく元刑事の物語と言えるのだろう。

     

    そこには、どこの組織もある隠蔽と画策があり、現場としてのプライドがある。

     

     

     

    一方で、娘を誘拐された親の物語として見る時、永瀬正敏演じる父親の執念と無念さが観客の胸を締め付けてくる。

     

    当然、この両者があっての横山原作だと思うのだが、前後編を見て感じたのは警察という組織を描く方にやや重きがあるのではないかということ。

     

    主役の佐藤浩市の演じぶりの是非が問われてくるわけだが、僕にはどうしてもこの人が主演俳優に思えない。今更父親と比べるのもおかしな話だが、甘いマスクの二枚目俳優でありながら、どこか画一的で凄みが感じられない。

     

    元刑事の広報官という役柄にしては、パリッとして羽振りが良さそうで、現場を外された男の悲壮感も感じられない。

     

    そのせいで、自身の娘の失踪を抱えながらも、それが伏線として生きてこない。

     

    妻役の夏川結衣の、なんとも鬼気迫る存在感と比べてしまう。

     

     

     

    反対に、娘の誘拐によって人生を破壊されてしまった男・永瀬正敏の素晴らしさはどうだ。

     

    前編とは一転、後編では重要な役柄となる彼だが、げっそりとやせこけた背中の演技が素晴らしい。

     

    映画史に残る名脇役ぶりではないだろうか。

     

    と、ここでちょっと意地悪に考えて見ると、警察部分と誘拐事件部分の割合を少しだけ変えて、永瀬正敏主演映画にしていたらならば果たしてどうだったのだろう。

     

    娘を思う親の気持ち。

     

    それを14年間持ち続けた男の悲哀さは、観客の涙を振り絞らせたに違いない。

     

    同じ思いを持っているはずの広報官に、あまりそれを感じられなかったのが、いまひとつな部分であるし、同時に真犯人が娘を思う気持ちのリアルさが伝わってこなかった。娘をもつ父親でありながら、どうして他人の娘を殺してしまったのか。

     

    映画史に残る傑作などと大げさな宣伝文句が、せっかくの人情ドラマをつまらないものに貶めている気がしてならない。

     

    | 座付き作家 | 映画の感想 | 06:07 | comments(0) | trackbacks(0) | - |
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