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    万城目学に学ぶこと
    評価:
    万城目 学
    集英社
    ¥ 1,700
    (2011-04-26)
    コメント:万城目学という人は、関西県が日本史に多くのネタを持つことに目を付けた人。京都、奈良、ときての滋賀。琵琶湖に浮かぶ竹生島をちゃっかりミステリーの舞台にしてしまった。

    万城目学の本といえば「鴨川ホルモー」だが、あの本の表紙のイラストが好きではないために敬遠しつづけてきた作家。「プリンセス・トヨトミ」が映画になった際に、ついに「辛抱たまらん!」と原作を読んでしまったのを契機に、次々に読むことになった。ところが、好みというのは難しいもので、このイラストの本を所有したくなくて、いつも図書館で借りて読んでいる。「どんだけ嫌いなんや?」と突っ込まれそうだが、嫌いなものはどうしようもない。そんな事情もあって「偉大なる、しゅららぼん」をようやく読んだ。もちろん図書館で借りて。


    「ホルモー」は京大と京都市内、「あをによし」では奈良、「トヨトミ」は大阪と、さすが京大出身だけあって、売りどころをしっかりと押さえている作家さんだが、この「しゅららぼん」は滋賀が舞台だ。となると、当然読者としては滋賀にネタがあるのか?ということになる。

    ところが、あったのだ。滋賀には強力なネタが。そう、琵琶湖である。日本一大きな湖・琵琶湖は40万年前に出来た(そうである)。昔の人はこの湖を一生「海」だと思っていたらしい。それほど巨大な湖なのだから、ここに主がいると想像した人は数えきれないだろう。

    琵琶湖の主・龍と行きがちなところを、そう簡単に行かないのが万城目マジックである。まず物語の冒頭、琵琶湖を挟んで湖西、湖東、湖北とそれぞれの土地の由来が紹介される。主人公の日出涼介は湖西の生まれなのだが、高校入学を機に本家がある湖東へと向かう。この本家というのが凄い!昔のお城そのままに外堀、内堀を持つすごいものなのだ。当主である日出淡十郎という従姉(同級生)と一緒に市内の高校へ通うことになるのだが、お城から堀を舟で送り迎えしてもらうあたりで、読者はすでに万城目マジックにまんまとひっかかってしまう。

    さらに淡十郎の姉である清子が白馬で登場すると、一気に「しゅららぼん」の世界にハマってしまう。この日出家一族は、「潮の民」の末裔で、なんと人の感情を操作する力を持っている。つまり「買いたい」と相手に思わせることで商売は繁盛。いわゆる近江商人をベースにした心憎い設定だ。

    ここに敵対する勢力の末裔が登場することで、一気に面白くなる。こちらも「潮の民」だが、こちらは相手を動かす力を持っているころから、武芸指南役として栄華を誇ってきた。この両者が互いに反目しあい、互いを追い出すことを宿命としているのだが、途中、第3の力を持つものが現れる。

    こうなると誰が敵で、誰が味方なのか分からなくなる。


    「偉大なる、しゅららぼん」とはネーミングの勝利でもある。「鴨川ホルモー」のホルモーが小鬼を使った架空のゲームであったのと同じく、しゅららぼんは僕の予想とはかけ離れたものであった。ついつい滋賀に伝わる伝奇的なものかと思えば、まったくのでっち上げである。

    万城目学という作家は、舞台の設定がものすごく上手な作家だ。登場人物も魅力的だし、なにより読者をあっといわせる大きな仕掛けがある。

    しかしながら、今作「偉大なる、しゅららぼん」では、後半の盛り上がりから先が、どうも予定調和的というか、伏線をはっておいたものをすべて使いました的な安仕上がりなミステリーのような感じで、超能力?合戦にしても、戦いにしても、非常に局所的で大きくうねらないのがもったいない。シナリオを書いていてよく言われるのは、用意した材料をすべて使いました的になると小さくなるということ。時には作者でさえ思いもよらない主人公の行動なりが欲しい。

    気の小さい出来の悪い弟キャラと、殿様キャラのいとこはいいとして、白馬にのった引きこもりの清子、身長175センチのバタ子などの脇役が、都合のいいところで都合よく登場するあたりがいまいち面白みに欠けるところなのだろうなぁと思った。

    特に清子は、デブでちびで他人の頭を覗けて、記憶を消す事もできる超能力者なのだから、もっと予想外の行動をさせてもよかったんじゃないかな?

    ともあれくそ暑い一日を、琵琶湖畔にいるような気持ちにさせてくれた本作であった。
    | 座付き作家 | 雑記 | 17:57 | comments(1) | trackbacks(1) | - |
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      | - | 2015/10/30 3:45 PM |









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      「偉大なる、しゅららぼん」万城目学
      高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやって来た日出涼介。本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。実は、日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族。日出家のライバルで、同
      | 粋な提案 | 2015/10/30 3:37 PM |
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